2026.10.19
第2話 「そもそもBNIって何者だ?」
BNIに入るかどうか。
その前に、そもそもBNIとは何なのかを、もう少し理解しなければならない。
「ビジネス交流の組織です」と言われれば、何となく分かった気になる。
しかし、交流会という言葉から想像するのは、人が集まって、名刺を交換して、自己紹介をして……という場だった。
どうやらBNIは、それだけではないらしい。
BNIは、さまざまな分野の経営者や事業者が、紹介を通じてお互いのビジネスの発展を目指す組織である。
メンバーは「チャプター」と呼ばれるグループで活動し、定期的に顔を合わせながら、互いの仕事への理解と信頼を深めていく。
ここで出てくるのが、「リファーラル」という言葉。
聞き慣れない言葉だが、ビジネスにつながる紹介のことだ。
ただ、紹介といっても、知っている人の名前を誰かに伝えれば、それでよいという話ではない。
どんな仕事をしているのか。
どんな人の、どんな困り事に応えられるのか。
そして、安心して紹介できる人なのか。
そこを理解していなければ、紹介する側も、紹介される側も困ってしまう。
なるほど。人を集めるだけではなく、紹介できる関係を育てるのか。
もう一つ、BNIを知るうえで欠かせない考え方がある。
「Givers Gain®(ギバーズゲイン)」という理念だ。
日本語では、「与えるものは与えられる」と表される。
自分の仕事を増やしたいと思っていた私にとって、ここは少し立ち止まるところだった。
「自分の仕事を広げたいのに、まず相手に貢献するのか?」
言葉の意味は分かる。
しかし、実際にどう行動すればよいのかは、まだよく分からない。
不動産の仕事でも、お客様に役立つことを考えるのは当然である。
ところが、ここでは業種の違うメンバーのビジネスにも目を向けることになる。
自分の仕事の説明だけでは足りない。
相手の仕事を知り、相手の役に立つ接点を考える。
思っていたよりも、ずっと奥が深そうだ。
そして、ふと第1話の出来事を思い出す。
私は、知り合いの紹介でBNIを知った。
その紹介が、新しい選択肢を私の前に運んできた。
人とのつながりが、仕事の可能性を広げる。
それは、すでに私自身に起きていたことでもあった。
ただし、仕組みが分かってきたからといって、入会を決められるわけではない。
むしろ、真剣に取り組む場だと分かるほど、気になることが増えていった。
「これを、今の私がやれるのか?」
組織の説明を理解することと、自分の一歩を決めることは、別の問題だった。
-第3話 『足元を固めるか、間口を広げるか』へ続く―
2026.10.18
第1話 「まだ早い?いや、今なのか?」
株式会社M-andを立ち上げて、まだ1年にも満たない頃。
不動産業界での経験は長いとはいえ、自分で会社を経営するとなると、また話は別である。
会社を立ち上げたからには、当然、仕事を増やしていかなければならない。
しかも、一時的に仕事が増えればよいというものでもない。
これから先も、安定して仕事を続けていけるようにしなければならない。
「どうすれば、もっと仕事の機会を増やせるだろうか?」
「どうすれば、継続して仕事をいただける仕組みをつくれるだろうか?」
そんなことを日々考えていた。
もちろん、目の前の仕事もある。
お客様への対応、物件調査、契約業務、広告活動、会社の運営……。
やることはいくらでもある。
そんなある日、知り合いから一つの話をいただいた。
「BNIというビジネス交流の組織があるんだけど、どう?」
BNI?
名前は聞いたことがあったかもしれないが、どんな組織なのか、詳しいことは分からない。
話を聞いてみると、さまざまな業種の経営者や事業者が集まり、お互いのビジネスの発展を目指す組織らしい。
なるほど。
異業種の方々と交流できれば、新しい仕事の機会が生まれるかもしれない。
これまで接点のなかった人たちと知り合うことで、自分のビジネスの間口を広げられるかもしれない。
そう考えると、なかなか興味深い。
しかし……。
BNIについて調べ、活動内容を知るにつれて、別の考えが頭をよぎった。
「ちょっと待てよ……」
定期的な会合がある。
さまざまな活動がある。
メンバー同士の交流や、学ぶべきこともある。
どうやら、ただ参加して名刺を交換するだけの交流会ではないらしい。
「いやいや、まだ開業して1年も経っていないぞ?」
「今でさえ、やることが山ほどあるのに……」
「これ以上、新しいことを始める余裕なんてあるのか?」
そもそも、今は会社の足元を固めることが先ではないのか。
目の前の仕事をしっかりこなし、会社の経営基盤を整える。
それから新しい活動を始めても、遅くはないのではないか。
一方で、こんな考えも浮かぶ。
「でも、仕事を増やしていかなければ、会社は続かないよな……」
「新しい人との出会いが、そのきっかけになるかもしれない」
うーん。
どちらも間違っていない気がする。
新しいことを始めるには、時間も労力も必要だ。
しかし、何もしなければ、今までと違う結果は生まれないかもしれない。
そんなことを考えながら、BNIへの入会を迷っていた。
そして、ふと思った。
そもそも今回、BNIという組織を知ることになったのは、なぜだろう?
自分で探し回って見つけたわけではない。
広告を見て申し込んだわけでもない。
一人の知り合いが、私に紹介してくれたからだ。
そのときは、特別深く考えていたわけではない。
しかし、振り返ってみると、これも一つの「人とのつながり」から生まれた出来事だった。
この紹介がなければ、私はBNIという世界に足を踏み入れることなど、考えもしなかったかもしれない。
さて、どうする?
まだ早いのか。
それとも、今だからこそ挑戦するべきなのか。
答えは、なかなか出ない。
こうして私は、新しい世界への入口に立ちながら、しばらく頭を悩ませることになった。
まさか、この一つの紹介が、後に自分の仕事に対する考え方まで変えていくことになるとは……。
このときの私は、まだ知る由もなかった。
-第2話『そもそもBNIって何者だ?』へ続く。-
2026.10.17
第12話 家の価値は過去を読み解くところから
最初に見えたのは、現在の建ぺい率を大きく超える建物でした。
裁判所の資料には「増築」。
登記と現況には約7㎡の差。
役所には、当時の申請書や図面が残っていない。
調べ始める前は、違反建築という結論に近く見えたかもしれません。
けれど、建築時期や規制の適用関係をたどると、建ぺい率については、当時は適法で、現在は既存不適格という整理が見えてきました。
さらに、建築確認時の面積は、現在の面積とほぼ一致していました。
それでは、約7㎡は、本当に増築なのか。
登記と建築確認の間で、何が違っていたのか。
この謎は、引き続き確認が必要です。
売買も、まだこれからです。
私は、都合のよい結論に急いでしまうことも、難しいからと調査を諦めることも避けたいと考えています。
古い家には、長い暮らしの歴史があります。
その価値を正しく伝えるには、今の姿だけでなく、そこに至るまでの記録を読み解くことが必要です。
書類を残してくださるご家族。
現地と記録を照らし合わせる私たち。
その積み重ねが、次の方への説明につながります。
安心でつなぐ住まいのバトン。
今回も、そのバトンを渡すための大冒険は、まだ続いています。
-第4章 END-
2026.10.16
第11話 査定で私たちは何を解読しているのか
「この家、いくらで売れますか?」
売却相談で、まず知りたいのは価格だと思います。
しかし、今回のような建物では、周辺相場と面積だけで答えを出せません。
同じような立地、同じような広さでも、適法性や住宅ローンの利用可能性によって、売却の見通しは変わるからです。
私たちは、現地と書類を行き来します。
建物と図面の形は合っているか。
登記と建築確認の面積はどう違うか。
新築や増築の時点で、何の規制が適用されていたか。
現在の基準に合わない理由は、後からの規制変更なのか、工事による違反なのか。
必要に応じて、行政や建築士、土地家屋調査士などと確認します。私たちだけで分からないことを、分かったことにはしません。
査定を依頼するときは、金額と一緒に尋ねてみてください。
「増築や、建築上の問題も確認してもらえますか?」
「住宅ローンや、将来の建て替えへの影響も説明してもらえますか?」
株式会社M-andは、価格の根拠となる条件を調べ、分かったことと、追加調査が必要なことをお伝えします。
それが、お客様に安心して判断していただくための査定だと考えています。
次回へ続く。
2026.10.15
第10話 お父さん おじいちゃん その書類は捨てないで
今回の調査で、改めて強く感じたことがあります。
建築確認や設計図書は、大切に保管してほしい。
家を建てたときの分厚いファイル。
難しい数字や図面が並び、普段は開かないかもしれません。
でも、その中には、家の成り立ちを説明する大切な手掛かりが入っています。
• 確認済証など、建築確認に関する書類
• 確認申請書の控えと添付図面
• 検査済証
• 配置図、平面図、立面図、構造図などの設計図書
• 増改築の図面、申請書類、工事契約書など
お父さん、お母さん。
おじいちゃん、おばあちゃん。
「古い紙だから」と処分する前に、どうか一度、中身を確認してください。
そして、ご家族に「家の書類はここにある」と伝えておいてください。
原本を保管し、あわせてスキャンなどで控えを残しておくと、探すときにも役立ちます。
将来、売却を考えるのは、お子さんやお孫さんかもしれません。
そのとき、書類が一冊あるだけで、確かめられることが増えます。
家と一緒に、その家を説明できる記録も残していただきたいのです。
次回へ続く。
2026.10.14
第9話 少しだけの増築が売るときの大問題に
ここで、これから増築を考えている方にもお伝えしたいことがあります。
「部屋が狭いので、少し広げよう」
「ベランダを囲って、室内として使おう」
「庭に物置をつくろう」
暮らしを便利にするための工事です。しかし、気軽に行った工事が、思わぬ違反につながることがあります。
建ぺい率や容積率の上限を超える。
必要な確認申請を行っていない。
道路や隣地との関係で、基準に抵触する。
工事の内容や場所によって、確認すべきことは変わります。
特に覚えておきたいのは、確認申請が不要な工事でも、建築基準法などのルールを守らなくてよいわけではないということです。
長年住めているから、問題がない。
固定資産税を払っているから、適法。
登記したから、違反が解消した。
そういう判断もできません。
違反は、安全性や周囲の環境に関わり、是正指導などの対象になることがあります。将来の売却で、住宅ローンの壁にぶつかることもあります。
増築する前に、建築士などへ相談してください。
住まいを便利にする工事で、将来の選択肢を狭めないために。
次回へ続く。
2026.10.13
第8話 同じ広さの家でもローンの扱いが変わる
この違いは、言葉の問題だけではありません。
売却の進め方に関わります。
買主様が住宅ローンを利用する場合、金融機関は収入や返済能力だけでなく、購入する不動産も審査します。
違反建築の場合、物件を理由に融資を断られることがあります。家を気に入った買主様がいても、購入資金を用意できなければ、売買は進みません。
一方、既存不適格については、事情や資料を確認したうえで、融資を検討できる金融機関もあります。
もちろん、「既存不適格なら必ず借りられる」という意味ではありません。金融機関や商品、建物の状態、耐震性、担保評価などによって判断は異なります。
だからこそ、「建ぺい率が超えています」と伝えるだけでは足りません。
いつ建てられたのか。
どの規制が後から適用されたのか。
それを何の資料で説明できるのか。
この整理が、購入できる方の範囲や、売却価格の見通しにもつながります。
査定には、融資の入口まで考える難しさがあるのです。
次回へ続く。
2026.10.12
第7話 違反建築と既存不適格は大きく違う
ここで、今回の調査の中心となる二つの言葉を整理します。
一つは「違反建築」。
建てたときに守るべき基準に違反していたり、その後の増築などで違反状態になったりした建物です。必要な建築確認を受けていないなど、手続き上の違反もあります。
もう一つは「既存不適格」。
建築当時は適法だったものの、その後の法令改正や都市計画の変更などによって、現在の基準には合わなくなった状態です。
当時から守るべきルールを守っていないのか。
当時は守っていたが、後からルールが変わったのか。
ここが、大きな違いです。
今回の建物も、建ぺい率については、当時の適用関係をたどることで、違反ではなく既存不適格として整理できる方向が見えてきました。
ただし、建物のすべての問題が、それで解決するわけではありません。建ぺい率は既存不適格でも、後年の増築部分には違反がある、ということもあり得ます。
古いから違反。
確認番号があるから全部問題なし。
どちらも、簡単には言えないのです。
次回へ続く。
2026.10.11
第6話 その7㎡最初からあったのでは
建築確認時の面積と、現在の建物の面積を照らし合わせたとき、私は再び手を止めました。
ほぼ一致しているのです。
裁判所の資料では、登記面積との差である約7㎡を「増築」と捉えています。
しかし、建築確認時には、すでに現在に近い面積が記録されていました。
「その7㎡は、後から増えたのではなく、最初からあったのでは?」
新しい可能性が出てきました。
登記の記録に違いがあるのか。
面積の算定方法に違いがあるのか。
建築確認の計画と、完成した建物に違いがあったのか。
もっとも、面積がほぼ同じだからといって、形や構造まで同じだったとは断定できません。当初と同じ広さでも、別の部分を増減させた可能性は残ります。
裁判所の資料を軽く扱うつもりもありません。
ただ、別の公的な記録と食い違うなら、その理由を確認する必要があります。
「増築」という二文字で終わるはずだった調査が、終わらなくなりました。
建物は、まだ答えを教えてくれません。
次回へ続く。
2026.10.10
第5話 番号はあるけれど図面がない
さらに記録を追うと、当時の建築確認番号と、検査済証番号が確認できました。
建築確認は、工事前の計画について、建築基準法などへの適合を確認する手続きです。検査済証は、工事完了後の検査に合格したことを示す書類です。
「それなら、当時の図面を見れば分かるのでは?」
私も、その図面があれば、今回の謎を解く大きな手掛かりになると考えました。
ところが、50年以上前の建物です。
今回、役所では当時の申請書や図面を入手できませんでした。
番号などの記録はある。しかし、計画の細部を確かめる資料は残っていない。
「役所へ行けば、家の書類は全部そろう」
そう思いたくなりますが、古い建物では、それがかなわないことがあります。
また、当時の検査の記録があっても、その後の工事を含め、現在の建物全体が適法だと保証されるわけではありません。
得られた手掛かりは大切にする。
ただし、それだけで答えを急がない。
ここからは、残された面積の記録を、もう一度丁寧に比較していきます。
次回へ続く。