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2026.09.05

第1章 安心でつなぐ住まいのバトン

第3話―「この人なら」と思える人へ―

不動産売買では、売主様と買主様はそれぞれ違う立場にいます。

売主様は、できるだけ良い条件で売りたい。

買主様は、自分が納得できる条件で購入したい。

価格交渉や引渡し時期、設備や残置物など、一つの契約をまとめるまでには、本当にいろいろな調整があります。

ですから、不動産仲介は「条件をまとめる仕事」でもあります。

でも、多くの取引に関わっていると、それだけでは説明できない場面があります。

買主様について売主様にお話ししたとき、

「そういう方なら、この家を使ってもらえたら嬉しいですね」

と言われることがあります。

反対に買主様から、

「売主さんは、どうしてこの家を売るんですか?」

「どんな方が住んでいたんですか?」

と聞かれることもあります。

もちろん個人情報がありますから、何でもお話しできるわけではありません。

それでも、まだ契約前なのに、少しずつ売主様と買主様の間に信頼のようなものが生まれることがあります。

私は、こういう瞬間を大切にしたいと思っています。

不動産屋は、売主様の言葉を買主様へ、買主様の言葉を売主様へ伝えるだけの「伝言係」ではありません。

双方が何を大切にしているのか。

何を不安に感じているのか。

どうすれば安心して取引できるのか。

その間に立って考えるのが、不動産仲介の仕事だと思っています。

もちろん、すべての取引がこんな形になるわけではありません。

それでも、売主様が大切にしてきた家を「ここで暮らしたい」と思ってくれる人が現れ、売主様も、「この人なら」

と思ってくださったなら、その間をしっかりつなぎたい。

契約書に「売主様の思い」という項目はありません。

でも、その契約書の向こうには、これまでその家で暮らしてきた人と、これから暮らしていく人がいます。

私は、それを忘れない不動産屋でありたいと思っています。

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