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第2章 査定依頼が一気に4件!~相続案件の奥深さ~

2026.09.22

【M-andの大冒険記】第2章 査定依頼が一気に4件!~相続案件の奥深さ~

第10話 住まいのバトンが、次の家族へ

買主様が見つかった後も、行政への確認、農地に関する手続き、専門家との連携、契約条件の調整が続きました。売主様には分からないことが多く、買主様にも不安があります。私はその間に入り、分かっていること、分からないこと、今後必要になることを一つずつ整理しました。

決して売りやすい物件ではありませんでした。それでも、調査を省略せず、難しい部分を隠さず、売主様と買主様の双方に説明を重ねたことで、無事に成約の日を迎えることができました。相続人から受け取った家の歴史や思いも、次の買主様へ引き継がれていきます。

査定とは、不動産に金額を付けるだけの仕事ではありません。特に相続不動産では、机上査定の段階で分かることよりも、現地へ行き、行政で調べ、相続人のお話を聞いて初めて分かることが数多くあります。そして調査によって見つかるのは、問題点だけではありません。その家でどのような人が暮らし、何を大切にしてきたのか。資料には載っていないストーリーも見えてきます。

だからこそ、最初に高い金額を出してくれた会社や、最も早く回答した会社という理由だけで、売却を任せる不動産会社を決めないでいただきたいのです。何がまだ分からないのかを正直に伝え、必要な調査を行い、最後までその不動産と向き合ってくれる。そんな信頼できる会社へ相談することが大切です。

私たち株式会社M-andがつなぐのは、所有権だけではありません。そこに住んでいた方の暮らし、ご家族の思い、そしてこれから始まる買主様の新しい生活です。物件の背景を受け取り、安心とともに次の方へ届ける。それが、私たちの「安心でつなぐ住まいのバトン」です。

ーENDー

2026.09.20

【M-andの大冒険記】第2章 査定依頼が一気に4件!~相続案件の奥深さ~

第9話 物件のストーリーを、次の買主様へ

売却活動を始めても、すぐに買主様が見つかったわけではありません。お問い合わせをいただいても、市街化調整区域や農地、許可の説明をすると検討をやめる方がいます。住宅ローンや将来の建て替えを理由に、購入を断念する方もいました。誰にでも売りやすい物件ではなかったのです。

だからといって、難しい条件を小さく扱うことはできません。分かっている制限、確認した手続き、まだ確定していないことを、最初から丁寧に説明します。そのうえで私は、この家でどのような暮らしが営まれていたのかもお伝えしました。

おじい様が庭や畑を大切にしていたこと。家族が帰省すると、この家に集まっていたこと。相続人が遠方に住み、守り続けることは難しいけれど、できれば次の方に大切に使ってほしいと考えていること。それは物件を良く見せるためにつくった話ではありません。売主様から受け取った、この家の本当のストーリーです。

物件広告の面積や築年数だけでは、自分がそこで暮らす姿を想像できない方もいます。しかし、そこで営まれていた生活を知ると、「自分たちなら、ここでこんな暮らしができるかもしれない」と感じることがあります。

やがて、条件を理解したうえで、この環境と建物に魅力を感じてくださる方が現れました。価格だけでつながったのではありません。この家の過去の暮らしと、買主様が思い描くこれからの暮らしが、少しずつ重なり始めたのです。

次回へ続く。

2026.09.19

【M-andの大冒険記】第2章 査定依頼が一気に4件!~相続案件の奥深さ~

第8話 売却価格から差し引かれる税金と費用

売却価格の見通しが立っても、その金額がすべて相続人の手元に残るわけではありません。相続した不動産を売却して利益が出れば、譲渡所得に対する税金を検討する必要があります。先代が購入したときの契約書が見つからず、取得費が分からないことも珍しくありません。

自分が住んでいた家ではないため、自己居住用の特例をそのまま使えるとは限りません。相続した空き家について利用できる制度もありますが、建物の築年数や利用状況、売却時期などの要件があります。税金については、物件ごとに税理士や税務署へ確認することが大切です。

さらに、行政書士への許可申請費用、測量や分筆、相続登記、残置物の撤去、建物の解体などが必要になる場合もあります。古い家だから解体して更地にすればよい、と簡単には決められません。解体後の利用や再建築、固定資産税への影響まで確認して判断する必要があります。

私がお伝えしたいのは、査定額の高低だけで不動産会社を選ばないでほしいということです。「いくらで売れるか」と同時に、「売るまでに何が必要か」「最終的にいくら残るのか」まで考えてくれるか。それが重要です。

調査内容と費用の可能性を説明し、売主様と相談したうえで、ようやく売却活動の方針が決まりました。ここから、この家の条件と物語を受け止めてくださる買主様を探します。

次回へ続く。

2026.09.18

【M-andの大冒険記】第2章 査定依頼が一気に4件!~相続案件の奥深さ~

第7話 査定価格だけでは表せない物件の価値

現地と行政での調査が進むにつれ、最初の机上査定を見直す必要が出てきました。周辺の宅地価格をそのまま当てはめても、この物件の市場価格にはなりません。市街化調整区域、農地、古い建物、許可の確認。条件が複雑になるほど購入できる方は限られ、住宅ローンの利用にも影響することがあります。

机上で算出した価格、現地調査後に考えられる価格、実際の市場が受け止める価格。この三つが同じとは限りません。最初に高い査定額を示せば、売主様には喜んでいただけるかもしれません。しかし、売り出した後に問い合わせがなく、何度も値下げすることになれば、その査定は何のためだったのでしょうか。

一方で、値段が付きにくいことと、価値がないことも同じではありません。広い庭、土に触れられる暮らし、周囲の静けさ、長年家族が守ってきた建物。一般的な住宅を探す方には合わなくても、まさにその環境を探している方がいるかもしれません。

査定では、問題点を見つけるだけでなく、その物件が誰にとって価値を持つのかを考えます。おじい様が畑を耕し、家族が集まり、季節ごとの暮らしを営んできた。そのストーリーも、この家にしかない魅力です。

数字を大きく見せるのではなく、制限と可能性の両方を整理する。そして、現実的な価格と届ける相手を考える。それが、私たちが行う査定です。

次回へ続く。

2026.09.17

【M-andの大冒険記】第2章 査定依頼が一気に4件!~相続案件の奥深さ~

第6話 農地はそのままでは売れないことがある

この物件には、登記上の地目が「畑」となっている土地も含まれていました。田や畑は、宅地と同じように、売主と買主が合意すれば必ず名義を移せるとは限りません。誰が購入するのか、購入後にどのように利用するのかによって、農地法上の許可や届出が必要になることがあります。

農地として引き継ぐのか、住宅の敷地など別の目的で利用するのか。現況はどうなっているのか。農業委員会への確認は必要か。農地転用は可能なのか。場合によっては測量や分筆も検討します。ここでも、机上の登記情報だけでは答えは出ません。

手続きが必要となれば、行政書士や土地家屋調査士などへ依頼する費用も考えなければなりません。査定価格が同じでも、売却までに必要な費用や時間が違えば、売主様の手元に残る金額も変わります。相続人にとっては、予想していなかった負担になることもあります。

私は、分かったことだけでなく、まだ確認中のこと、考えられる手続き、費用が発生する可能性を順番にお伝えしました。専門用語を並べるのではなく、「なぜその確認が必要なのか」を共有しなければ、本当の意味で納得して売却を進めることはできません。

相続不動産では、売りたいと思ってから初めて、こうした課題が分かることがあります。だからこそ、価格だけを知らせて終わる査定ではなく、売却までの道筋を一緒に考える相手が必要なのです。

次回へ続く。

2026.09.13

【M-andの大冒険記】第2章 査定依頼が一気に4件!~相続案件の奥深さ~

第5話 「農家分家」で建てられた家

市役所で資料を確認していくと、この家は市街化調整区域にあり、過去に「農家の分家」などの許可を受けて建てられた可能性が見えてきました。市街化調整区域とは、市街化を抑制することを基本とする区域です。そこでは、住宅地と同じ感覚で、誰でも自由に家を建てられるとは限りません。

今、建物が存在しているからといって、将来も当然に建て替えられるとは限りません。建築当時に誰が、どのような理由で、どの許可を受けたのか。次に購入する方が同じように利用できるのか。過去の許可が売買によってそのまま引き継がれるのか。確認すべきことが増えていきます。

このような点を曖昧なまま「建物付きの土地」として売り出せば、買主様が購入後に建て替えできないと知るかもしれません。反対に、必要な手続きを踏めば利用できる可能性があるのに、最初から価値がないと決めつけることも適切ではありません。

不動産会社だけで結論を出せない部分については、市役所の担当部署と協議し、必要に応じて行政書士などの専門家へ相談します。許可の履歴や現在の取扱いは、地域や物件ごとに確認しなければなりません。

机上査定で周辺相場を掛け合わせただけでは、この過程は価格に反映されません。査定とは、数字を出す前に「この不動産を誰が、どのように買えるのか」を調べる仕事でもあるのです。

次回へ続く。

2026.09.12

【M-andの大冒険記】第2章 査定依頼が一気に4件!~相続案件の奥深さ~

第4話 現地に残されていた「暮らしの跡」

資料をそろえた私は、現地へ向かいました。長い間使われていなかった家は、庭木や雑草に囲まれ、道路から見ただけでは敷地の奥まで分かりません。車を止め、周囲を歩き、道路との高低差や進入口、隣地との境界らしき位置、排水先などを確認していきます。

室内へ入ると、資料からは分からなかった建物の傷みが見えてきました。床の感触、天井や壁の染み、建具の動き、水回りの状態。増築されたように見える部分もあります。登記上の建物と、目の前にある建物が同じなのか。ここで初めて、追加で調べるべきことが具体的になります。

けれど、私が現地で見るのは不具合だけではありません。柱に残る子どもの身長の印、使い込まれた台所、庭に植えられた木、農作業に使われていた道具。そこには、この家で誰かが生活していた跡が残っていました。相続人から聞いた「祖父は畑仕事が好きだった」という話が、目の前の風景とつながります。

難しい条件がある物件でも、そうでない物件でも、一つひとつの家には物語があります。どのような方が住み、どのような生活を営んできたのか。それを知ることは、物件をきれいに見せるためではありません。次にこの家を必要とする方へ、正しく魅力を伝えるためです。

そして敷地を確認すると、登記上「畑」となっている土地が含まれていました。さらに行政で調査を進めると、「農家の分家」という言葉が出てきたのです。

次回へ続く。

2026.09.11

【M-andの大冒険記】第2章 査定依頼が一気に4件!~相続案件の奥深さ~

第3話 その査定額、本当に信じて大丈夫ですか?

登記簿、公図、地積測量図、建物図面、周辺の売出事例や成約事例。机上査定では、入手できる資料を使って、おおよその価格を算出します。一般的な住宅地で、土地や建物の状況がある程度分かっていれば、机上査定でも参考となる価格帯を示すことはできます。

しかし、相続した古い家や土地では、資料だけでは見えないことが少なくありません。建物は実際にどの程度傷んでいるのか。登記されていない増築部分はないか。敷地へ車で入れるのか。境界や越境はどうなっているのか。農地は現在どのように使われているのか。過去にどのような許可を受けて建てられたのか。こうしたことは、机の上で数字を眺めているだけでは分かりません。

査定を依頼すると、その日のうちに回答が届くこともあります。複数の会社へ依頼すれば、他社より高い金額を提示する会社もあるでしょう。回答の早さや査定額は、会社選びの材料の一つです。ただし、査定額はその金額で売れることを約束するものではありません。

私は、まだ調べ切れていない段階で、耳触りのよい金額だけを先にお伝えすることには慎重です。「今の資料で分かるのはここまでです」「正確に判断するには現地と行政の確認が必要です」とお話しします。依頼者が知らない問題は、私にもまだ分からないからです。

大切なのは、最も高い金額や最も早い回答だけで会社を決めることではありません。何が分かっていないのか、次に何を調べるのかを正直に説明してくれるか。そこに、信頼できる不動産会社を見極める一つのポイントがあります。

次回へ続く。

2026.09.10

【M-andの大冒険記】第2章 査定依頼が一気に4件!~相続案件の奥深さ~

第2話 相続した本人も、物件のことを知らない

相続不動産の査定で、最初にぶつかることがあります。それは、現在の所有者である相続人が、その物件についてほとんど知らないということです。もちろん、責められることではありません。子どもの頃に祖父母の家へ遊びに行っただけ、独立してからは年に一度も帰っていない。そのような方が、ある日突然、売主の立場になります。

雨漏りをしたことはあるのか。過去に増築していないか。給排水管はどこを通っているのか。隣地との境界について話し合ったことはないか。私が尋ねても、「分かりません」という答えが続きます。しかし売却する際には、相続人も売主として、知っている事実を買主様へ伝えなければなりません。知らないから何も確認しなくてよい、とは言い切れないのです。

そこで私は、建物の状態だけでなく、その家でどなたが、どのように暮らしていたのかを聞いていきます。おじい様は農業をしていたのか。お父様はこの家で何年暮らしたのか。離れや物置はいつ頃つくられたのか。断片的な記憶でも、調査の手掛かりになることがあります。

同時に、それは物件のストーリーを知る時間でもあります。庭の木を大切にしていたこと、家族が集まる縁側があったこと、畑で採れた野菜を近所へ配っていたこと。査定書の数字には表れませんが、その家には確かに暮らしがありました。

分からないことを分からないままにせず、記憶と資料を一つずつつないでいく。相続不動産の査定は、そこから始まります。

次回へ続く。

2026.09.08

【M-andの大冒険記】第2章 査定依頼が一気に4件!~相続案件の奥深さ~

第1話 ある日、相続不動産の査定依頼が4件届いた

ある日のことです。会社に戻ってメールを確認すると、不動産の査定依頼が入っていました。それも1件ではありません。同じ日に、4件です。さらに内容を確認すると、4件とも相続によって取得した不動産についてのご相談でした。

一日に4件も重なったのは、たまたまだったのかもしれません。ただ、不動産の仕事をしていると、相続した実家や土地について「自分では使わないけれど、どうしたらよいのか分からない」という相談が増えていることを感じます。親世代が地方に不動産を持ち、相続人である子どもたちは東京や神奈川など遠方で暮らしている。今の時代、決して珍しい話ではありません。

査定の入口もさまざまです。不動産会社のホームページから直接依頼する方もいれば、紹介や一括査定サイトを利用する方もいます。まず金額を知りたい、と考えるのは当然です。今回の4件も、物件の場所や内容はそれぞれ違いました。共通していたのは、相続人が遠方に住み、その不動産について詳しく分からないということでした。

「小さい頃に何度か行っただけです」「父から詳しい話を聞いていません」「土地がどこからどこまでなのかも分かりません」。そんな言葉が並びます。依頼者が知らないことは、机上で資料を見る不動産会社にも分かりません。まずは登記簿や公図などを集め、何が分かり、何がまだ分からないのかを整理する必要があります。

4件の中には、調べ始めると確認事項が次々に現れる物件もありました。ここからは、その中でも特に調査に時間を要した1件を中心に、相続不動産の査定で私が何を見ているのかをお話しします。

次回へ続く。

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